外資っぽくない縁の切り方

いきなり誤解を与えかねないタイトルですみません。しかし、一般的に外資は冷淡だと言われ、縁(人)を切るのもあっさり行うというイメージがあるようです。

確かに、日系と比べれば明らかにそうだと思う。しかし、僕が前にいた日系では、社員をクビにする代わりに、違う部門に配置したり、閑職に追いやることを行っていた。違う部門で復活する人もかなりいるが、閑職が続いた結果、本人のやる気もすっかり削がれ、周囲への影響もゼロではない、という状態を見てきた。冷淡と言われる外資とどっちがいいのだろう。


今日の話は、僕の中ではマネージャーとして育ててもらった出来事で、自分勝手に言えば良い経験談なのだが、相手は快く思っていなかった可能性も高いし、それゆえに人に勧められるようなテクニックでも何でもない。そういう断りを入れた上で、誤解をおそれずに話してみたい。もし、不愉快に感じる人がいたら、最初に謝っておきます。ごめんなさい。

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以前に、採用活動には時間がかかるというの中で、退職勧奨の実態について書いた。外資に入ってきた訳だから、少なくとも一芸に秀でた何かが縁となったはずで、その一芸が時代やチームになじまなくなってしまったケースが多いだろう。また、一匹狼的な人の場合、チームが大きくなるに従って、チームプレイが発揮できず、浮いてしまうケースもある。僕がマネージャ−になって、始めての退職勧奨はこのタイプの人に対してだった。

この人は頭が良い。しかし、社内に敵と味方を作り、メールを使って攻撃したり、比喩を利用してイメージ戦略に出たり、と僕らの頭を休ませる日はなかった。仕事はできる方だったが、それ以外のことに神経と時間を費やしてしまったためか、仕事そのものに精彩さが足りない。

当然、僕の期待を伝えたり、「なぜギャップがあるのだろうか」ということについて考える時間を共に過ごした。昔の話なので忘れてしまったが、1回1〜2時間のミーティングを何度行ったことだろうか。極力、本人に話をさせ、意識や潜在意識を探っていったから、毎回長時間にわたって話し合った。

しかし、せっかく理解が得られたように見えても、同じようなことが続くため、「これが最後のチャンスですよ」というトーンで、3回ほど話したように記憶している。3回というのは、1〜2ヶ月おきに3回という大きな括りの回数で、1つの括りでは数回に分けて面談したから、会って話した回数は10回は下らないだろう。

今思い返して見ると、「せっかく理解が得られた」と思ったのは僕の勝手な解釈で、実はまったく理解されていなかった可能性も高い。

一方で、職場の雰囲気も悪化していったから、その状況はなんとかしなくてはならなかった。「敵」とラベルを貼られた人たちは仕事がやりにくいし、それを周囲で見ざるを得ない人もたくさんいたのだ。

僕は、本人に「なんとか解ってほしい」「本当に力を入れて欲しいのは、社内の競争でも敵味方の論争でもなく、その人の持っている力を出し切る仕事なのだ」という思いで話を続けた。僕の上司も、僕以上に忙しいはずなのに、何度か一緒になって話してくれた。そこで、僕らが抱いていたのは、偽りなく、「なんとか頑張って欲しい」という願いであった。

このことは、最近自身のブログで紹介した「箱」の本の中で、『人は、言葉だけでなく、態度や雰囲気でも察することができる』ことだったのではないか、と思う。最終的に変化は起こらなかったが、本人から、「僕と話すことは良かった」という言葉を退職のときに頂いたのは自分が救われた感じがした。依然として「あなたは”味方”でした」とも言われたのには、ちょっと複雑な想いもしたけれど。

「自分が救われた…」と言うあたり、まだ自分ができていないなあと思う。本人の想いがどうだったのか、本当は何を望み、なぜ周囲を傷つける行動を取ったのか、は謎のままである。

しかし、このことを通じ、何事も誠心誠意取り組むことを学んだ。それは今に至るまで、大変に役立っていると思う。

余談にはなるが、この話をビジネス・コーチにしたときの反応は、別の意味で忘れられない。「コーチは、人を救うことはできない。それはカウンセリングや診療になってしまう。コーチは成長を手伝うことはできる。」というものだ。

ジレンマになるが、人を助けたいという一心で投じたエネルギーは、時に力にもなるし邪魔にもなる。それはエネルギーを受ける側も、与える側も同じだと思う。カウンセリングも、コーチも、プロではないマネージャーがそれを行うのはさらに難しさが伴う。それでも、コーチのアプローチは、本人の力を引き出すサポートの役割に特化するから、お互いが納得さえすれば成立しやすいのだろう。




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